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ムーンな想い vol.08
December 5 - 2009 - 寺薗淳也
「H-IIA15号機打ち上げが示す予感(後編)」

「いぶき」を打ち上げたH-IIA15号機に搭載された、7つの小型衛星(JAXAプレスリリースより)
Image credit: JAXA
まず、前回のコラムからずいぶん時間が経ってしまったことを素直にお詫びしたい。多忙は理由にしてはならないのかもしれないが、ちょっとだけそれをお許し願えると、ありがたい。
さて、「いぶき」打ち上げからもずいぶん時間が経ってしまっている。前回は「いぶき」打ち上げからみえてくる月・惑星探査の将来ということで、搭載センサー数を限定した打ち上げというポリシーがどう世界を変えていくかを考えた。今回は、別の視点から考えてみることにしよう。
今回、いぶきには7つの「相乗り衛星」(ピギーバック衛星)が搭載されていた。H-IIAロケットの打ち上げ余剰能力の活用というわけである。詳細はJAXAの打ち上げ特設サイトをみていただくとして、このページ内のリストをよくみていただきたい。
開発元は大学であったり高等専門学校であったり、民間企業であったりと様々であるが、すべてが小さな衛星である、というところがポイントである。
今回は7つもの同時打ち上げで注目を浴びているが、似たような例はこれまでにもある。JAXA自身が打ち上げたマイクロラブサットがいい例であろう。この衛星は、やはり相乗り衛星として、地球環境衛星「みどりII」と同時に打ち上げられた。主な目的は技術の確立や実証ということであったが、予定を上回る3年9ヶ月にわたる運用を行うことができた。そして、その技術は、さらに後の小型衛星へと引き継がれている。
さらに忘れてはならないのは、このマイクロラブサットを通して、若手技術者が直接宇宙技術を体験することができ、技術者の育成…すなわち人材を育てるという側面に大きく貢献した点である。この衛星は、JAXAの若手技術者グループが少人数で作った、いわば手作り衛星なのだ。
小さな衛星であれば、少人数のグループが短時間で作り上げることができる。
小さければ予算が少なくて済む。小さい予算での発注も可能だし、大きな予算で大量生産を行って、1つが機能を喪失しても残りがカバーする体制を作る手もある。また、衛星が多数あれば、それらがグループを組んで1つの衛星機能を発揮してもよい。これがフォーメーションフライトと呼ばれる技術であるが、最近では衛星技術の一つとして大いに注目されている。
小さな衛星はどうしても機能を絞らざるを得ないが、これは逆に、少数のセンサーを搭載するという(前編で述べたような)思想とも通じるものがある。そして、数を多く打ち上げることは、頻度を高め、切れ目ない探査によってあらゆる視点から情報を得ることを可能にする。それはまた、前の探査の成果をすぐにフィードバックし、新しい衛星のセンサー開発などにつなげていくことにもつながる。10年前の情報と技術を元に、時代遅れだとわかっていて大金をかけて大きな衛星を打ち上げる、というような無駄なことをしなくて済む。
また、小型衛星は宇宙機関ではなく、小さい会社や団体、大学などの研究機関でも作ることができる。例えば、宇宙工学を専門とする大学と、衛星データを活用した研究を行う理学系のグループが共同チームを組んで、月探査用の超小型衛星を短期間で開発。そのデータを得て、工学系では衛星開発の知識を習得し、理学系ではサイエンスの成果を得る。さらに、両方の分野で人材を育てることができるという点も大きい。
小型衛星の開発期間は短くて済むため、例えば大学院生が在学中に衛星開発をテーマとして研究を進めることもできる。失敗する可能性も確かにあるが、お金という点で考えても大型衛星に比べてリスクをはるかに軽減できることは明らかだし、たとえそうなったとしても、若い人を育てるという意味では確実なリターンがあるはずだ。
小型衛星のターゲットはいまや地球周辺だけではなく、月に向かっている。ヨーロッパや日本などでは、学生が月周回衛星を開発する、という構想の下に、技術的な検討が進められている。金星探査機「あかつき」にも大学が開発する衛星が4機搭載されるが、その1つ「UNITEC-1」は、あかつきと共に金星軌道へ向かうことになる。これは、大学(さらには、宇宙機関以外の組織)が開発した衛星が深宇宙空間へ向かうという世界初の試みで、非常に注目されることになると思われる。
こういった小型衛星により、研究者が工学関係者の力を借り、自分がみたいものをみるセンサーを自分で飛ばす、ということが可能な時代が、もうすぐやってくるであろう。
何年か後に振り返ったとき、H-IIA15号機、そして「あかつき」の打ち上げが月・惑星探査技術のターニングポイントだった、としみじみ振り返るときがやってくる。そのようなこともあるかもしれない。
Written by 寺薗淳也
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