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ムーンな想い vol.03

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「宇宙技術および科学の国際シンポジウム」

Rocket
Image credit: ISTS事務局(ISTS Secretariat)

ロケットは、白い煙と轟音を残して、青空へと飛び立っていった。

6月、静岡県浜松市で、「宇宙技術および科学の国際シンポジウム」という学会が開催された。ISTSという略称で研究者・技術者に知られるこの学会は、日本で定期的に開催される国際学会としては最大のものである。日本からはもちろん、海外からも多くの研究者が参加し、宇宙開発や宇宙科学について議論する場である。

日本ではあまりおなじみではないかも知れないが、こういう国際学会では、必ず教育やアウトリーチ(平易にいえば「普及啓発」)のセッション(学会の中で特定テーマを議論するための時間)が設けられる。ISTSにおいても当然、宇宙に関する教育やアウトリーチを議論するセッションが設置されている。

この学会の場では私も発表してきたが、今回はさらに、このセッションを拡大し、一般の人向けにもイベントを開催した。専門家向けの日程が終了した土曜日と日曜日を使って、土曜日は講演、日曜日は打ち上げイベント、という形での開催を行った。

土曜日の講演は、午前中が「かぐや」「はやぶさ」に関する講演。午後は、宇宙開発に取り組んでいる大学生、そして高校生たちが自らの研究成果について発表する場であった。

大学生が宇宙開発に取り組む、という話は割と一般的になってきたが、高校生というのははじめて聞く人もいるかも知れない。しかし、理科教育の延長、あるいは自分たちにチャレンジの一環として、衛星を作ってみたり研究してみたりする、そしてそれをちゃんとしたプレゼンテーションにまとめるということは、予想以上に大変である。壇上に上がる前の緊張した高校生たちの姿、そして生き生きとした発表、さらにはプレゼンが無事終わり、ほっとしていつもの姿に戻った高校生たち。彼らはきっと、次の世代の宇宙開発、あるいは日本の技術開発の基礎を担ってくれるに違いない。

そして日曜日。朝のしのつく雨に、私の胸には一瞬、今日の打ち上げイベントが本当に実施できるのかどうかという不安がよぎった。梅雨の時期。天候を変えることができないもどかしさに悩む。

しかし、信じられないことが起こった。打ち上げイベント開始時間の午後1時が近づくにつれ、空には晴れ間が広がってきたのである。私が中田島砂丘に着いた頃には、空は午前中の雨がうそのように、初夏の晴れ間が広がっていた。

秋田大学と和歌山大学の合同チームが、すでに手際よく準備を始めていた。学生さんたちから構成されるチームは、ロケットのセッティングや周辺状況の確認などをきっちりと行っている。

打ち上げを予告するアナウンスを聞いて、犬を連れて散歩に来た人たちもちょっとびっくりして、しかし打ち上げがよく見られる小高い丘へと向かって歩いていく。次第に人の波が大きくなっていく。テントでは、子どもたちが準備の様子を興味深そうに眺めている。

そして打ち上げの午後2時。…と思ったら、いろいろあって少しずつ遅れ、午後2時15分頃。ロケットは小さいが、その発する轟音は、辺り一帯に鳴り響いた。私も撮影するためにカメラを構えていたが、その迫力のせいか、うっかり撮影スイッチを間違えてしまうという情けなさであった。正直、打ち上げというのは自分の2つの眼でみるのがいちばんいい。

ロケットはやがて風に流されて、視界から消えていってしまった。打ち上げは成功。学生さんたちの努力はしっかりと報われたのだ。

さて、次は子どもたち向けのイベント。あらかじめ申し込んでおいてもらった子どもたちを対象にした、モデルロケットの打ち上げである。モデルロケットとはいっても使うのは火薬。水ロケットとはまた違う迫力がある。

もちろん、迫力には危険がつきものである。そのため、必ず大人たちがついて、打ち上げを見守っていかなければならない。でも、子どもたちは、ロケットが空高く舞い上がるたびに歓声を上げていた。

ロケットの胴体は自分たちの手作り。自分が作ったものが大空高く飛んでいく姿は、子どもたちにはきっとよい刺激になっただろう。願わくは、これがきっかけになって「その道」に進んだ、という人が、一人でもいいから出てきて欲しいものである。

宇宙開発という分野で、教育が重要なことは論を待たない。単に宇宙の専門家を育てるというだけではなく、宇宙開発や研究で得られたさまざまな素材を、教育に活用することは重要であり、また効果的だ。このような「宇宙教育」という動きは近年盛んになってきている。海外ではすでにいろいろな取り組みがなされているが、日本でもその動きが盛り上がってきたといえよう。

私は、日本人の心情に合わせた、どこの国の形とも違う宇宙教育が進められると面白いと思う。俳句や日本画などに代表される、情景を取り込むことが上手な国民性と宇宙開発という、一見まったく異なるものの合体。その姿はおそらく、世界の誰もがみたこともないものになるだろう。

そして、そのような宇宙教育の一つの形がこの夏、学生たちを熱くさせる。秋田で開かれる能代宇宙イベント、そして缶サット甲子園だ。高校生や大学生たちが、1つの目標に向かって力を注ぐ姿は、みているこちら側も熱くさせるものがある。彼らが作り上げる衛星やロケットが、いつか宇宙へ向けて旅立つ、そんな姿を、夏の終わりに夢見たい。

Written by 寺薗淳也

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