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世界ロケット徒然 Flight 02
July 9 - 2007 - 柳川邦彦
「ロケットの歴史 1942~1972 - V-2からアポロまで -」
宇宙開発について語る時、ゴダードやフォン・ブラウン、スプートニク1号やガガーリン、アポロやスペースシャトル、ミールや国際宇宙ステーションなどについては比較的よく耳にすると思います。ですが、それらを支えてきたロケットそのものについては意外と話を聞かないのではないでしょうか。今回は、宇宙開発の歴史をロケットに焦点をあてて振り返ってみようと思います。

図1:初の実用ロケットV-2 (Image credit: NASA)
20世紀に入り、ゴダードやオーベルトによってアメリカや欧州でいくつも液体ロケットエンジンの実験や開発が行われるようになります。ですが、研究用ではない初の実用ロケットを開発、運用したのは第二次大戦中のドイツでした。数千発がロンドンなどに撃ち込まれたV-2ミサイルです。ロケットは、まず兵器としてその歩みを始めたのでした。
音速を超えて約300kmの距離を飛ぶV-2は、当時にあっては画期的な兵器でした。そのため、大戦末期にドイツへ進撃した連合軍は競ってその資料を探し求め、戦争が終わるとともに得た技術や人材の多くを自国へ持ち去りました。V-2を開発し、後にアポロ計画で人類を月へ送り込んだフォン・ブラウンは、この時にアメリカへ亡命したのです。V-2の技術の大半を手にしたのは、アメリカとソ連でした。当時最先端であったその技術をもとに、彼らは宇宙開発へ他国よりはるかに有利なスタートを切ります。
米ソには、ロケットを開発しなくてはならない切実な理由がありました。大戦末期に実用化された核兵器は戦後すぐに原爆から水爆へと進歩を遂げ、対立を深めていた両国は核弾頭を敵国に撃ち込む手段を模索し始めます。その候補のひとつとして注目されたのがロケットでした。彼らは、核ミサイルを欲していたのです。
両国は手に入れたV-2を試射、解析するところから始め、得られたデータなどで独自の技術を発展させることでICBM(大陸間弾道ミサイル)やIRBM(中距離弾道ミサイル)の開発を進めていきます。時を同じくして、これらのミサイルを使って人工の天体を軌道に乗せる、すなわち人工衛星の構想も進められました。軌道上から敵国の情報を得られる偵察衛星は、軍事的に大きな意味を持っていたのです。

図2:スプートニク2号を打上げたR-7 (Image credit: NASA)
そして1957年、ソ連が世界初の人工衛星スプートニク1号の打上げに成功しました。使われたロケットはR-7セミョルカ、後に改良を重ねて現在のソユーズにまで発展する傑作機です。これがアメリカに与えた衝撃は大変なものでした。人工衛星を打上げられるというのは、すなわちアメリカ本土に核弾頭を直接撃ち込めるということを意味します。そして事実、このセミョルカは世界初の大陸間弾道ミサイルでもありました。当時はまずミサイルを開発し、それを衛星打上げに転用したのです。
さらにわずか1ヶ月後、ソ連はライカという名の犬を乗せた宇宙船スプートニク2号を打上げます。慌てたアメリカは、それまで冷遇していたフォン・ブラウンと彼のチームを引っ張り出し、自国初の人工衛星エクスプローラ1号を打上げました。かくして、10年以上に渡る米ソ宇宙レースが始まります。
このレースがアポロの月面着陸でアメリカの勝利に終わるまで、数多くの有人宇宙船と、それを遥かに上回る数の人工衛星や探査機が打上げられました。そして、それに必要となるロケットも大きく進歩していくことになります。現在、米ロで使われているロケットの多く、アトラスやデルタ、ソユーズやプロトンなどはこのころに開発されたものの改良型や発展型です。

図3:サターンVの打上げ (Image credit: NASA)
これは、ロケットの大型化の時代でもありました。人工衛星から有人宇宙船、さらに月宇宙船とペイロードが重くなるにつれてロケットもどんどん大型化していき、そしてその大きさはアメリカのサターンVとソ連のN-1で頂点に達します。いずれも月宇宙船を打上げることを目的としており、低軌道に100tものペイロードを打上げることができました(ただし、N-1は一度も打上げに成功していません)。現在使われているロケットが打上げられるのは最大でもせいぜい20t前後であり、これらに匹敵するのはソ連のエネルギア(2度打上げられた後に予算不足で計画中止)とアメリカのアレスV(現在開発中)だけです。
この頃起きたもうひとつの変化が、ロケットとミサイルの乖離です。多くのロケットの母体となったミサイルですが、これらの多くは早い時期にミサイルとしての欠点に直面します。液体ロケット、特に常温で保存できない液体酸素を酸化剤に使っているセミョルカやアトラスは打上げ準備に時間がかかるため、核ミサイルには不向きでした。そのため、即座に打上げが可能な固体燃料ミサイルのミニットマンなどが配備されるにつれ、これらのロケットはミサイルとしては引退していくことになります。ただし、タイタンのように常温で保存が可能な推進剤を使っている一部のロケットは、80年代までミサイルとしても現役に留まっていました。
今回はここまでです。次回はアポロ計画の終了後、低迷した宇宙開発が現在に至るまでの間にどう変わっていったのかをお話したいと思います。
Written by 柳川邦彦
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