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世界ロケット徒然 Flight 01
May 29 - 2007 - 柳川邦彦
「ロケットの基本」

Image Credit: ESA
皆さん初めまして。sorae.jpでコラムを書かせていただくことになった柳川邦彦と申します。私はロケットが好きなので、この連載では世界中の色々なロケットを紹介していこうと思います。どうぞよろしく。
今回は、まずロケットの基本的な原理や役割などについて軽くお話しましょう。退屈かもしれませんが、ロケットの話をするのにある程度の専門用語を使うのは避けられないので、少しばかりお付き合いください。
■衛星軌道とロケットの役目
物を投げると放物線を描いて落下します。速く投げればより遠くに落ちます。もしこの速度がある程度以上なら、放物線が地球の丸みと一致して、投げた物は地面にぶつからずに落ち続けることになります(図1)。この落ち続けている物体を人工衛星、落下コースを衛星軌道、そして必要な速度を軌道速度と呼ぶのです。
図1:衛星軌道の略図
軌道速度は高度が上がるほど小さくなりますが、地上での速度である秒速7.9kmを第一宇宙速度と呼んでいます。速度が上がれば軌道は円から楕円になり、秒速11.2kmの第二宇宙速度を超えると地球の重力を脱出して戻ってこなくなります。火星探査機などがとるのがこの軌道。
また、高度約36,000kmでは衛星はほぼ24時間で軌道を一周します。もしこの軌道が赤道をたどっていれば、地球の自転と衛星の動きが一致して、地上からは衛星が静止しているように見えます。これを静止衛星軌道と言い、通信衛星や気象衛星などに広く用いられています。
衛星は、地上に対して水平に飛んでいるということに注意してください。ロケットの役目とは、ペイロード(積み荷、宇宙船や人工衛星などのこと)を水平に思い切り(つまり軌道速度で)放り投げることなのです。打上げ直後に垂直に昇るのは、邪魔な大気の層をできるだけ早く抜けるためです。
■ロケットの作動原理と推進剤
ボーリングの球のような重い物を投げると、身体が投げた方向と逆に押し返されるのを感じます。これと同じように、ロケットはガスを高速で噴射する反動で前に進むのです。ガスで空気を押しているわけではないので、宇宙空間でも推力を得ることができるのです。
ジェット機などは燃料を燃やすのに大気中の酸素を使っていますが、真空中を飛ぶロケットは酸素(あるいは酸素に代わる物質)を自分で持っていかなくてはいけません。これが酸化剤であり、燃料と合わせて推進剤と呼んでいます。この推進剤の種類によってロケットは、固体の燃料と酸化剤を混ぜてゴムで固めた固体燃料ロケット、液体の燃料と酸化剤を燃焼室で混ぜて燃やす液体燃料ロケット、そして固体燃料と液体酸化剤を使うハイブリッドロケットに大きく分けることができます(図2)。
図2:推進剤の種類によるロケットの分類
固体ロケットは構造が簡単で大きな推力(※1)を出すことができますが、比推力(※2)が低くて噴射のコントロールができません。液体ロケットは比推力が高く噴射を自由に調節できるものの、構造が複雑で推力に劣る傾向にあります。ハイブリッドは強い推力が出せて噴射をコントロールできますが、液体ロケットほど効率がよくありません。これに加えて推進剤に使う物質には何種類もの組合せがあり、性能や目的によって使い分けられています。
※1:ロケットエンジンの出す力の強さ
※2:ロケットエンジンの燃費のようなもの
■ロケットの構造
ロケットは、推進剤タンクとエンジンを組み合わせたステージ(段)をいくつも積み重ねた構造をしており(一段目に補助ブースタをつけることもあります)、その上にペイロードをフェアリングというケースで包んで搭載します(図3)。それぞれのステージは、推進剤を使い切ると切り離されます。こうしてロケット本体を軽くしながら、軌道速度まで加速するのです(図4)。
図3:多段式ロケットの構造
図4:H-IIAロケットの飛行シーケンス(Image Credit: JAXA)
なぜそんなもったいないことをするのでしょうか。実のところ、軌道速度を達成するのは簡単ではありません。秒速7.9kmとはマッハ23であり、衛星の高度は低くても200km以上になります(旅客機はせいぜいマッハ0.8で高度10kmぐらい)。そのため、ロケットは不要なものをどんどん捨てなければ衛星軌道と速度に届かないのです。発明から半世紀以上たつ現在でもほとんどのロケットが使い捨て式なのは、これが理由です。
さて、ロケットの原理についてはここまでです。次回はロケットの歴史、最初の実用ロケットであるV-2が飛んでから六十余年の間に彼女達がどう変化し、何をしてきたのかをお話したいと思います。
Written by 柳川邦彦
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