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アストロ気象学

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Hot, Dry and Cloudy
Image credit: NASA/JPL-Caltech

惑星の科学が太陽系の外まで飛び出して久しい。だが太陽以外の星をまわる惑星が多数存在することはわかってきたものの、その惑星の姿の観測はいまなおチャレンジングな試みだ。なぜなら、これらの天体は遠方にあり、しかも主星に比べて惑星の放つ光は弱い。そのため惑星の光だけをとりだして観測することは至難の業である。

How to Pluck a Spectrum From a Planet
Image credit: NASA/JPL-Caltech

だが、これを克服する試みの一つが最近成功した。その原理は主星と惑星の食を利用する。食から外れている時に、主星と惑星両方からの光の合計を観測しておき、次に惑星が主星の背後に隠れた状態のときに、主星のみからの光を観測する。これらの差を取ることで、惑星の光を抽出する。原理は簡単だが精度の高い測光が必要である。NASAの打ち上げたスピッツァー赤外天文衛星を使うことで、この観測が可能になった。

観測の対象となったHD 209458bとHD 189733bは、どちらも木星と似たサイズと重さを持つが、主星のごくそばを数日の周期で回っている、太陽系の常識からは外れた惑星だ。表面温度が千度を超えるほどの高温と考えられ、いわゆる「ホットジュピター」の仲間とされる。スピッツァーの観測ではこれらの灼熱の惑星が放つ赤外線を取り出した。ちなみに惑星からの赤外線の強さは、主星からのものの千分の1程度の大きさである。

観測前の予想は、これらの惑星からは10μm付近の波長の赤外線が強めにでているだろうというものであった。これは赤外線をブロックする主な物質として水蒸気が考えられるからである。木星型惑星には水素とヘリウム以外の重要な副成分としてH2Oが取り込まれている。H2Oはホットジュピターでは凝結して雲になることなく、大気のほとんどの高度で水蒸気として漂っているはずである。水蒸気は赤外線をよく吸収する性質があり、実は地球大気では温室効果の7~8割を担っている。しかし水蒸気は10μmを中心とした数μmの範囲-窓領域と呼ばれる-の波長の赤外線をあまり吸収しない。そのためこの波長帯では温度の高い大気深部から放たれた強い赤外線が、ブロックされずにでてくると思われていた。

ところが観測結果は意外だった。まずどちらの惑星も水蒸気の窓領域に渡って赤外線が強いということはなかった。また、さらなる驚きは8μm付近と10μm付近の狭い波長帯で赤外線が特に強く放出されていることである。このような特徴は水蒸気では説明がつかない。観測グループらは、これらの惑星の大気の成層圏に岩石質の粒子でできた雲が漂っているために、水蒸気の効果がマスクされてしまうだけでなく、狭い波長帯からの強い赤外線が生じるのではないかと推測している。

確かにホットジュピターのような過酷な灼熱環境では岩石すら蒸発しうるので、その蒸気が冷えて雲を作ることはありうる。ところがこの岩石の雲による解釈では、雲の温度が高くないとデータを説明できないのが奇妙に思えるところである。

星の光で熱された惑星の大気がどんな造りになるのかは、実は気象学の得意とするテーマだ。一方で、そのための道具立ては宇宙物理学による星の構造論と共通している。基本的な物理は同じだからだ。ところが両分野はあまり交流がなく、実際に双方同じようなテーマを扱った教科書を読みくらべてみると、一方の常識が他方では非常識という部分がかなりあっておもしろい。今回のデータも気象学の視点で見れば、まったく違った大気の姿を描けるかもしれない。どなたか一緒に考えませんか。これをきっかけに「アストロ気象学」という新しい分野を開拓できるかもしれませんよ。

※参考記事

■NASA's Spitzer First to Crack Open Light of Faraway Worlds
http://www.nasa.gov/mission_pages/spitzer/news/spitzer-20070221-full.html

Written by 倉本圭

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