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Space Shuttle Chronicles vol.01
March 10 - 2007 - 柏井勇魚
「Introducion」

Image credit: NASA
スペースシャトルの話をしましょう。そう、ロケットのように打ち上げられ、飛行機のように帰ってくる、あのちょっと変わった宇宙船のことです。
「シャトル」というのは「行ったり来たりするもの」という意味(バトミントンの羽も、駅から観光地の間を往復するバスも"シャトル"ですよね)。スペースシャトルは文字通り「宇宙と地球の間を往復する宇宙船」として設計されました。計画が始まったのは1970年代の初め、まだ宇宙飛行士たちが月を歩いていた頃。初飛行は1981年の4月です。最初の飛行から25年以上たった今もなお、スペースシャトルは世界で唯一の再使用型の軌道往還機です。
大きな特徴は二つ。一つは大量の物資と人員を同時に軌道上に運び、また地上に持ち帰ることができるということ。これによって、スペースシャトルは宇宙ステーションの建設、人工衛星の放出/回収、科学研究などきわめて多彩なミッションをこなすことができます。もう一つは機体の大半を再利用できること。ただ残念なことに、この特徴はあまり生かされているとはいえません。当初の予定では、機体を再利用することで打ち上げコストが劇的に下がるはずでしたが、逆にメンテナンスコストが膨れ上がってしまったために、打ち上げ費用は使い捨てのロケットよりも高くなってしまいました。
2006年末の段階で、フライト数は117回。すでに800人を超える宇宙飛行士を軌道上に送り届けました。これまで作られた有人宇宙船の中ではもっとも多くのフライトをこなし、もっとも多くの人間を乗せた宇宙船です。ちなみに2番目はロシアのソユーズシリーズ。有人フライトは96回。宇宙に送り届けた人員はまだ300人に達していません。
ただ一方で、スペースシャトルはもっとも多くの人命を奪った宇宙船でもあります。これまで2度の事故を起こし、合計14人の命が失われました。1度目は1989年「チャレンジャー」が打ち上げ直後に空中爆発を起こし、民間人乗組員を含む7名のクルー全員が死亡。2回目は2001年「コロンビア」が大気圏突入時に空中分解を起こし、こちらも7名のクルー全員が死亡しました。
今、スペースシャトルを巡る評価は揺れています。性能だけを見ればスペースシャトルは非常に優れた宇宙船といえるでしょう。その搭載能力と柔軟性は他の打ち上げシステムとは一線を画しています。しかし、メンテナンスコストが高いこと、トラブルが多いこと、2度の死亡事故を起こしたことなどから、特に近年批判の声が大きく「失敗作」と揶揄する声も少なくありません。コロンビア事故以後、NASAの内部からもシャトルの存在意義を問い直す声が聞こえてきます。
実はスペースシャトルは、すでに2010年までに退役することが決定していて、現在次世代機の開発が進んでいます。次世代機の初飛行は2014年。スペースシャトルのような有翼型ではなく、アポロに似たカプセル型。また、人間と貨物を別々のロケットで打ち上げるスタイルになりそうです。
スペースシャトルに限らず、宇宙開発は人々の夢や希望を担うという「理想」と、政治や社会の動きに追従せざるを得ないという「現実」の両面を持っています。スペースシャトル計画も、その時々によって理想と現実の間を揺れ動きながら、時に輝かしい成功を収め、時に目を覆いたくなるような大惨事を引き起こしました。ただ、この25年間、間違いなくスペースシャトルは有人宇宙開発の一時代を築いてきました。宇宙開発の歴史を語るのならば、あるいはその行く末を占うのならば、この宇宙船を無視することはできないでしょう。
これからお話しするのは、あの奇妙な宇宙船と、それを作り上げた人々の話。彼らがあの宇宙船に何を託し、それをどうやって実現しようとしたのか。そして、彼らが何をなし得、何をなし得なかったのか、というお話です。
Written by 柏井勇魚
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