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O君と銀河 vol.06
June 25 - 2008 - 谷口義明

Image credit: Yoshiaki Taniguchi
12.エピソード XII
僕が教養部にいた時代というのは、まだバンカラの気風が残っていた時代だった。腰に手ぬぐいをぶら下げているような輩も、キャンパスを堂々と歩いていた時代だったのだ(少数ではあるが)。
僕はといえば、こういう生粋のバンカラに憧れていたわけでもないので、少し違ったバンカラ路線を歩んでいた。その路線とは本を読むことである。高校時代に後悔があったとすれば、やはり本を読む時間がなかったことだと思っていた。大学に入ったら、少しゆっくり本を読もうと、決意していたのだ。
ここで、本を読むことがなぜバンカラ路線なのだろうか。それは、どんな読む本を読むのか、ということに関わっている。ちょっと例を挙げてみると
・『三太郎の日記』 阿部次郎
・『愛と認識との出発』 倉田百三
・『禅の研究』 西田幾多郎
・『古寺巡礼』 和辻哲郎
・・・・・・
という感じになる。どうして理学部の学生が、と思われるかもしれないが、『こういう著作は読んでおくものだ』という雰囲気が当時はあった。リルケの詩集を片手に散歩するのも、おしゃれだったはずである。僕はそういう輩ではなかったが。
これらの本を読んで、何を感じ、何を理解し、何を考えていたかは、今となっては思い出せない。僕も大学生になったのかな。たぶん、そんなことを思いながら、難しい顔をして本を読んでいたのだろう。単なるスノッブ大学生のような気もするが、致し方ない。
13.エピソード XIII
なんだか、お堅い大学生活に突入した感もある。だが、実際にはそうではなかった。マージャンもしたし、音楽にも嵌った。マージャンはさておき、当時の音楽シーンはフォークソングに席巻されていた。かくいう僕も、井上陽水の大ファンで、毎日のように『断絶』や『陽水II センチメンタル』などのアルバムを聞いていた。ミリオンセラーになったアルバム『氷の世界』も圧倒的に凄かった。ギターに手を出したのもこの頃だ(まったく、下手だが)。ビートルズやボブディランも凄いのだが、僕には日本のフォークの方が性に合っているようだった。
僕の陽水マニアに拍車をかけたのは、彼のコンサートだ。1年生の秋、彼のコンサートが仙台の電力ホールという場所で開催されたのだ(たぶん、この会場は今はないと思う)。同級生(注1)に音楽系の顔利きがいて、「チケットのもぎりのバイトがあるんだけど、やんない?」という。それはやるしかないだろう。結局、バイト代をもらって、コンサート代を支払わず、さらに陽水のコンサートの客席の間の階段に座って聞くことができた。人生、晴れの日もある、ということだ(その後、武道館も含めて今までに10回以上は彼のコンサートに行った)。
舞台の上の彼は、あの強くしなやかな声で客席を酔わせる。フォークシンガーは天文学者よりかっこいい。僕はそう思った。だが、僕にフォークシンガーの才能があるはずもない。やはり、地道に天文学者を目指すしかないと思った。僕が果たして天文学者に向いているかどうかも知らずに。
闇夜の国から旅立つしかないのだ(注2)。
こうして、天文学とはあまり関係のないことで、月日が流れていった。
『はたして、天文学科に入れるのだろうか?』
大学に入学してはみたものの、僕の悩みはまだ続くことがわかった。
■注釈
注1:彼は、いま某大学で生物学科の教授をやっている。
注2:せっかくなので、井上陽水の歌の中で、僕の大好きな歌の一つ『闇夜の国から』のタイトルをあしらってみました。
(次回に続く)
Written by 谷口義明
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