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O君と銀河 vol.03

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Yoshiaki Taniguchi
Image credit: Yoshiaki Taniguchi

5.エピソード V

 将来どのような職業につくか。これはやはり大切な問題の一つだ。高校時代にもなると、僕も人並みに悩んでいたことがわかる。考古学者、昆虫学者など、どうも学者系の職業に憧れていたふしがある。しかし、現実はそんなに甘いものではないこともわかっていた。だから僕は何となく法律関係の堅い職業につこうと考えていた。堅いか軟らかいかはよくわからないにしろ、普通の生活の方が無難だろうと思っていたのである。

 そうすると、大学は文科系で、法学部あたりが目標になる。高校2年生の冬までは、本当にこの路線でいこうと思っていた。つまり、学者系の仕事は夢の一つと割り切っていたのだ。たぶん、全うな判断だったと思う。だが、前回紹介したように、高校2年の終わり頃、少しだけ自分の将来について真剣に考えてみたのである。

 大学というところは、ほとんどの人は一つしか行かない。青春の貴重な4年間を費やす場所だ。そう思うと、自分の一番学びたいことをやってみる方がいいに決まっている。明確な目標を持たずに、漠然と法学部に行くのが果たしてよいのか。なんだか、少し悩み始めたのである。

 そんなとき役に立つのが、全国大学一覧のような雑誌である。僕もその種の雑誌は持っていて、最初から見てみることにした。考古学者と昆虫学者については、既にあきらめていた。残るオプションは天文学者への道だ。とりあえず、全国大学一覧を紐解く。

 大体において、この種の雑誌は分厚い。とりあえず、最初から見ていくことになるのだが、結構大変だ。僕が読んだ全国大学一覧の雑誌は、北にある大学から載っているものだった。しばらく見ているうちに「東北大学」にぶつかった。理学部の箇所を読むと、どうやら天文学が学べそうだった。なぜなら、天文及び地球物理学科があったからだ。天文及び地球物理学科第一が天文、天文及び地球物理学科第二が地球物理になっている。これは、要チェックだ。

 その後も頁をめくる。しかし、結果はかなり悲惨だった。東北大学以降、天文学を学べる大学は東京大学と京都大学しかなかったからだ(註:現在はもっとある)。うーむ。これは、大変である。学者志向はあったものの、基本的には法学部でいいだろうということで、僕はいわゆる文系に属する学生だった。急に理系に転向し、はたまた東大とか京大を狙うというのもおこがましい。もし、天文学を学ぶのであれば、3つの大学の中では東北大学が無難なように思えた。

 問題は、本当に天文学に宗旨替えするかどうかだ。文系から理系。これには、やはり大きな障害がある。幸い、数学は好きだったので、人並みにやっていた。物理、化学、生物、地学。これらも無難な程度にはやっていたように思う。これは、当時の大学受験システムのおかげである。国立大学は5教科全てを課していて、違いは理科と社会の配分だけである。つまり、理系は(国語、英語、数学、理科、社会)=(120点、120点、120点、120点、60点)で、文系は(国語、英語、数学、理科、社会)=(120点、120点、120点、60点、120点)。理系は理科を2科目と社会1科目を選び、文系は逆に理科を1科目と社会2科目を選ぶことになる。大きな差ともいえるが、万遍なく勉強していればそれほどの負担にならない。古きよき時代だったかどうかわからないが、この受験システムが多少助けてくれたのだと思う。

6.エピソード VI

 ということで、天文学をやってみようかという気になった。恐る恐る、親に相談してみたところ、さすがに驚いたようだった。当然である。北海道大学の法学部に行くと思っていたはずだからだ。それが、東北大学の理学部。しかも、天文学だ。だが、
「まあ、好きにしなさい」
という返事だった。

 次に、高校の担任の先生に話をしてみた。先生も、かなり驚いたようだった。
「うーむ…」
まさに、そういう感じだ。隣に座っていた英語の先生も、僕の話を聞いてこういった。
「天文で飯は食えるのか?」
確かに、就職先の問題がある。かくいう僕も
「さあ…」
と答えるのが精一杯だった。そして、担任の先生がボソッと言った。
「実は、問題が一つある。君は文系のクラスに入ることになっている」
3年生になると、文系と理系にクラスが分かれるようになっていたのである。文型のクラスに入ると、当然、文系に特化された授業が組まれることになる。これは、大きなハンデキャップになる。そもそも、高校2年の終わりに文系から理系に転向するだけでも大きなハンデである。これは困ったことになった。

 何日かしてから、担任の先生に呼ばれた。
「まだ、気持ちは変わらんのか?」
「はい、やはり天文学をやってみようと思います」
「わかった」
一息いれて、先生が言った。
「じゃあ、俺が間違ったことにする」
一瞬、何のことがわからなかった。
「ようするに、君が理系クラスを志望していたにもかかわらず、俺が間違って文系に入れてしまったことする。そういうことだ」
最後の手段としか言いようのない、決断だった。僕は、ただただ感謝した。

 こうして、僕は無事、理系のクラスに入ることができた。失敗は許されない。先生のためにも、絶対に東北大学の理学部に合格しなければならない。やるべきことは勉強のみ。僕は3年生の春から、早くもスパートモードに入らざるを得なかった。

(次回に続く)

Written by 谷口義明

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