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O君と銀河 vol.01
March 1 - 2007 - 谷口義明

Image credit: Yoshiaki Taniguchi
概要:僕がどうして天文学者になったか、お話したいと思います。振り返ってみると、意外なことの積み重ねで、今に至っているように思います。その積み重ねの中で、中学生時代の友人のO君の影響が一番大きかったように思います。少年時代を思い出しながら、少し人生を振り返ってみたいと思います。よろしく、お付き合いください。
0.はじめに
僕は、いま、銀河を研究している。世の中では、天文学者として分類されているようだ。しかし、時々考えることがある。僕はどうして天文学者をやっているのだろう、と。
大人になって何をするか?もう少し俗物的にいうと、何を飯の種にするか?ということになる。夢は夢だろうし、現はうつつである。大体において、子供の頃の夢はかなわない。僕もそう思ってきた。
しかし、どうも歯車がひとつかみ合ったのかもしれない。なぜなら、僕は、はからずも天文学者になったからである。しかし、偶然と、偶然と、偶然。なんだか、そんな想定外の歯車の絡み合いの果てに、今の天文学者である僕がいるように思う。波乱万丈といえるかどうかわからないが、僕がどうして天文学者になったか紹介してみたい。
1.エピソード I
僕は“占い”というものが好きではない。特に理由はない。しいて言えば、占いで未来を確定してほしくない。たぶん、その程度のことだと思う。
“占い”と同様に、あまり信頼したくないものがある。それは、“適性検査”とかいうやつだ。車の運転など、実技的な要素が大きいものには、適性検査も必要だろう。しかし、向いている職業などの“ソフト的”なものについて、検査という手法はどうだろう。適正かどうか、検査ではわかるまい。やるか、やらないか。それが、職業を決めていると思えるからだ。
とはいえ、子供の頃には、いろいろなシーンで“検査”なるものが行われる。そのほとんどが無駄だとはわかっていても、である。その“検査”なるものを作っている、いわゆる大人の方々は、それらが如何に無意味かを知っているはずなのに、である。子供に伝えることがあるとすれば、「そんな検査は信じてはいけないよ」ということだと思うのだが、因襲は因襲として受け継がれるものなのだろう。
さて、私の経験した“検査”について触れておこう。小学校の6年生の頃だったと思う。いわゆる“適性検査”そのものであった。知能テストのようなもので、自分がそう思うことについてチェックしていくようなテストだった。その結果で、向いている職業がわかる、というものだった。それで職業が決まるのなら、楽なものである。
とにかく、その適正検査なるものの結果が出た。あまり正確に覚えていないのだが、一つだけ覚えている適性職業がある。天文学者。確かに、この職業があった。しかし、その頃、天文学に全く関心がなかった。関心があったのは考古学である。小学校時代、郷土研究部に入っていたこともあり、遺跡発掘などに関心があったのである。もう一つは、昆虫学者だろうか。その頃の趣味は、昆虫採集だったからだ。たぶんに、ファーブル昆虫記の影響もあったのかもしれない。研究者という具体的なイメージは持っていなかったかもしれないが、なんとなくそういう職業に憧れていたふしはある。しかし、今一度言っておくが、当時、天文学には全く関心がなかった、
2.エピソード II
中学生になっても、特に事情は変わらなかった。自然科学のようなものは好きだったが、相変わらず虫愛ずる少年だった。そういえば、ザリガニとかも好きだった。月も、星も、銀河も眼中にはなかった。あえて言えば、「夜毎、満月なら良いのに」と思っていたことである。そうすれば、暗い夜を恐れることもない。他愛のない、少年時代だったことになる。
そして、中学3年生を迎える。クラス替えがあり、僕はO君と同じクラスになった。とはいえ、特にO君と親しかったわけでなかった。住んでいる地域も少し離れていたし、小学校も違ったからだろう。しかし、クラスメートというのはありがたい。特に何かなくても交流ができるからだ。
まだ夏休みまでは遠い頃。休み時間にO君の席の近くを通りかかった。O君は物静かな人で、そのときも何か雑誌に目を通していた。僕は、通りすがりのことながら、その雑誌になんとなく興味を惹かれた。
「O君、何を見てるの?」
「うん、天文ガイドっていう雑誌だよ」
「へえ、天文に興味があるんだ」
O君の見ていた頁には、美しい天体の写真があった。それまで、天体や宇宙に興味を持ったことはなかったのだが、なんとなく気になった。
「ずいぶん、きれいだね」
「そうだ、ほんとにきれいだよね」
そんな話をしている内に、何だかほんとにその雑誌のことが気になった。思い切って聞いてみた。
「この雑誌、一晩借りてもいいかな?」
僕のぶしつけな質問に、O君は笑顔で答えた。
「いいよ」
そうして、僕は、一晩中この雑誌と付き合うことになった。なんといえばよいのかわからないが、何となく宇宙のことが好きになったような気がした。そして、僕は次の日、書店に向かい、この雑誌を買った。そのときから、僕は宇宙マニアになったのだと思う。
(次回に続く)
Written by 谷口義明
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