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たったヒトコトから先端科学! その3

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「他人と旅すれば、あたらしい常識をつくりだせる」 今泉真緒


「1人で旅すれば、自分がおかしく思える。友達と旅すれば、世界の方がおかしく思える。」
ある知人と旅についての話をしていたら、彼がこんなことを言った。出所が曖昧で恐縮だが、彼の国に伝わる言葉らしい。確かに1人で異国の地を旅すれば、知らないルールで動いている世界に身をおき、自分だけがおかしな存在だという気がする。わからない言葉、慣れないシステム、自分がここにいることの不自然さ。ここでは、自分にとっての常識すべてが非常識であろう、と。でもひとたび旅の友がいれば、とたんにおかしくみえてくるのは周りの世界。信じるものを共有するとは、こんなに強い感覚なのだ。
この比喩は、社会の中を旅する日常生活にもあてはまる。新しい環境に1人で身を置いた時、おかしいのは自分だけ。でも友人と何かをスタートするとき、おかしな世界に一石を投じたくなるかもしれない。では他人とする旅ではどうだろう。誰しも思い出せば、きっと他人と旅したことがあるのではないだろうか。旅先でたまたま出会った人、飛行機で乗り合わせた人……。見知らぬ他人と旅した時の感覚を思い出してみて欲しい。そこにいる理由はばらばらで、お互いに本当にどんな人か、信じられる人かはわからない。でも一瞬だけ目的を共有して、同じ方向へと進む。その時、正しいのは自分なのか相手なのか、世界に確立されたルールかあるのかどうかも、確証がない。一緒に旅しているのが他人だと意識した途端、絶対的なものが存在するという感覚が消えてしまう。こうしてみると、多くの日常生活は、他人との旅路であるともいえる。自分が所属する多くのコミュニティは、一瞬だけ目的を共有する他人の集まりではないだろうか。この時、お互いに少しずつ信用しあって、信じるものをすり合わせて新しい常識をつくりだしていく。このようにコミュニティのあり方を考えていると、「科学」という分野でおきていることが、つくづくすごいことだと感じる。科学の世界は、他人を信用することから始まる。そして1つの研究成果は常にオープンであり、全体でシェアする。1つの発見を常に全員が確認していたら、発展は遅々として進まない。1人が発見したことを信用して、それに基づいて次なる研究が行われていくからこそ、全体として大きな進歩が遂げられる。そして思いつきが世界の常識となっていく。逆にいえば、2年以上をかけてきた研究を他の人がやっていたとしたら、その努力は意味がなかったことになるという過酷なコミュニティ。ここでは、仮説、実証、再現可能性という明確なルールがあるからこそ成り立つのだが、科学者でないものにとっては驚くに値するコミュニティのあり方だろう。こんな科学分野の広がりを体感するのに、良い本がある。


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 (『新世紀未来科学』)


『新世紀未来科学』と名づけられたこの本は、SFで描かれてきたことと比較し、宇宙・情報・生命からエネルギーまで幅広い分野にわたって実際の科学で可能になったことが検証されている。知識を得るだけでも十分に面白い本だが、思いつきが常識になる過程での1人1人の取り組みに思いをはせれば、その力に魅了される。
他人と旅する私たち。科学は、示唆に富むコミュニティである。


【関連URL】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4893503952/250-9774368-4861060
http://www.sf-fantasy.com/magazine/interview/010401.shtml


Written by 今泉真緒

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