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世界むるるん紀行 Vol.01

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「古き良き時代の残滓」 クーロン黒沢


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 パソコン暗黒時代(80年代)から黄金時代(今世紀)まで、血と汗と金にまみれた歴史を振り返るための貴重な映像素材が、雪崩のようにたれ流されている……。
 1983年から2002年まで、アメリカの地方局で毎週30分間、ひたすら地味に放送されていたというパソコン番組 "Computer Chronicles" が、どんな経緯があったのかはともかく、インターネット・アーカイブにて軒並みダウンロード可能。

 司会は往年の竹村健一を彷彿とさせる髪型のグレースーツ男。そして、コメンテーターはどっかで見たことのあるひげ面の男──あれ、この人って……。
同姓同名&他人の空似かと思いきや、名前にハッとして確認してみると、ひげ男の正体はかのゲイリー・キルドールだった。
 かつて一世を風靡したオペレーティング・システム "CP/M" を作りデジタル・リサーチ社を創業。IBMからPC標準OSの座を打診されるも本人が趣味のため打ち合わせをすっぽかし、結果、美味しいところをビル・ゲイツが総取り。後年アタリSTにCP/MをベースにしたTOSというOSを搭載するという快挙というか空虚というか、偉業を成し遂げたはいいが、94年に自動車事故死……という、この世の栄華と没落をひとりで体現してしまったような、パソコン界の英雄である。


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 ともあれ、葬儀の司会の如き重苦しい面々を見るに、肩こりしそうな番組に思えがちだが、実際はそうでもない。
 それが証拠にゲーム特集の回では皆で妙なスケボーゲームに熱中しつつ、いい歳こいたスーツ男たちが「フォーッ!」とか「ビューリフォー!」とか、低いかけ声で盛り上がる姿を披露。背中の体毛が逆立つような戦慄が私を襲う。熱い時代だった。
こんな具合で、当時流行ったものは偏見なく概ね網羅。つまりはこれさえ全部(相当な量ですが)観ておけば、大体のことはわかるというわけ。80年代・90年代にパソコンをかじっていた人なら、涙と鼻水が止まらなくなること請け合いだ。
 かじってなかった人もしかり。エクセルが重たくて仕事になんねえよ。そろそろパソコン買い換えっかと思う前に、いっぺん80年代の表計算ソフトを見てほしい。昔の人の忍耐力に開いた口がふさがらないだろう。もちろん辛気くさいネタばかりでなく、コモドールやアタリの話もいっぱいだ。
 当時の有名人もゲストに総出演。クリス・クロフォード(政治ゲームの父・変な声)、トリップ・ホーキンス(アップル社創世記のメンバー。その後、EA社を設立)をはじめ、全米ゲーム少年のスーパースター、ビル・バッジまでもがピンボール・コンストラクションについて生トーク……。マニアにおいてはブリトニー・スピアーズが夜の夫婦生活を生で語るより衝撃的だ!


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80年代中盤の日本パソコン事情もリアルタイムで紹介される。冒頭にフビライ・ハーンの肖像画みたいなのがバーン! と出てきて、背後で「ピュルリラリ?」と怪しげな笛の音が響くのは、おそらく「世界ウルルンなんとか」でアフリカの映像が流れる前に、ゾウの群れ映像とともに「ドンドコドンドン……ウォーオーオーオオー」民族音楽が奏でられるのと同じく、一種のステレオタイプな偏見なのだろうが、当時の秋葉原映像とともに、寝起きみたいな髪型の西社長(当時のアスキー社長)が早口でしゃべったり、見逃せない映像が目白押し!
 どうでもいいけど、この時代のパソコン偉人たちの風貌を一言で表現するなら、人間と宇宙人の境界線。全身毛だらけの雪男かと思いきや、コモドール64ユーザークラブの代表だったり……。まあ、そういう時代だったのだから仕方ない。
プノンペン在住の私は、64K従量制という地獄のようなプロバイダのため、泣く泣くモザイク全開の低解像度ファイルをダウンロードするに留めたが、日本の皆さんには1本1ギガオーバーの最高画質ファイルを総なめしていただきたいと思う次第であります。

Written by クーロン黒沢

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