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ORGONIC∞HORIZONS Vol.06

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「工事中景展」
?地球が広告化する、その前に? 深沢慶太


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 (図1:
  新宿サザンビートプロジェクト/2004
  ステュディオ・ハン・デザイン photo:momoko japan)


Q.これからの都市の姿を予想しなさい。

A1.東京湾上に巨大な島を浮かべて新都心
  (例:丹下健三「東京計画1960」「東京計画1986」
     大友克洋『AKIRA』に登場する「ネオ東京」)。

A2.街全体がオタクの個室と化し、趣味の要素で埋め尽くされる
  (例:森川嘉一郎『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』
     ウィリアム・ギブスン『あいどる』に登場する
     電脳空間上のオタク九龍城「城砦都市」)

A3.”自然との共生”を実現した、緑豊かなエコロジー都市

A4.さらなる処女地開拓 → 宇宙へ!
   例:宇宙コロニー。島3号。月面の地下都市。
     赤道上から静止軌道に到達する軌道エレベータをおっ建ててその周囲を都市化、
     そいつらをつないで円環状にした軌道リング。
     火星を緑化?テラフォーミングしてそこに移り住む。
     軌道リングをさらに恒星系規模で造り上げて球状にし、
     ついには恒星そのものを球で覆ってしまったダイソン球……etc.


 ……どうやら私たちは、”都市” ”未来”という言葉を聞くと条件反射的に、巨大化し超高層ビルが建ち並ぶメガストラクチャー的な風景を思い浮かべてしまうらしい。
 上記4回答の中で考えれば、A3がいちばん理に適っているはずなのに、超巨大でビカビカのメガロポリスに比べて「夢がない」とか、「スケール感に乏しい」などと、いまだに童貞男子の処女征服欲にも似たむらむらがほとばしってしまう。どうにも困ったものである。

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 (図2:
  グリーングリーンスクリーン/2003
  クラインダイサム・アーキテクツ)

 この「週刊少年ジャンプ」式(すなわち、次々に現れる敵が次第に強さを増していき、それに応じて主人公もまた、どんどん強くなっていって、しまいには∞じみた無常感を醸し出す世界観の式)発展願望は、元をたどれば現代の物質文明的世界観に根ざしたものである。
 そこでは、文明が発展することとはすなわち、都市が巨大化したり超高層化、宇宙に進出したりすることであり、人類はよりよい生活実現のためにつねにそうやって進歩していかねばならない。
 そう考えると、我々はつねにどこかで新都市建設のための工事をしていることになる。
 まさにオブセッショナル。世界でも抜きん出てスクラップ&ビルドが著しい東京の様子を見ていると、現在住んでいる都市はまだまだ建設途上のかりそめの姿であるような気すらしてしまう。

 いずれにせよ、都市の発展に工事がつきものなのは確かである。
 だがこれまでそこに何の処方もなされてこなかった、というのはいかなることか。
 あの仮囲いやビニールシート、無骨な鉄板や剥きだしの資材など、景観としては醜悪極まりない様相を、我々はなぜ不問とし、これまで受け容れてきたのだろうか。
 その背景には、つねに工事をし続けるこの都市それ自体をかりそめの姿として考え、「いつかもっときれいになる」と信じて疑わない、健康?美容関連商品の消費構造にも似た心理が介在しているのかもしれない。
 新しいビルを打ち立てることが経済成長の象徴としてほぼ無条件に幸せに感じられた時代ならともかく、もうそろそろ現状のつぎはぎ具合に気が付いてもいいのではないか。


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 (図3:
  Muromachi in progress/2004
  ステュディオ・ハン・デザイン photo:momoko japan)

 ーーと、そこまで考えたかどうかは定かではないが、この”工事中”という状態の景観にデザインを施すことで、”工事現場”そのものの意味を変革する試みを行ってきたのが、アーバンスケープアーキテクトの韓亜由美が率いるステュディオ・ハン・デザイン(Studio Han Design)だ。

 例えば「新宿サザンビート・プロジェクト(新宿駅南口基盤整備事業)」では、新宿南口の工事現場の仮囲いに、それまで新宿が発信してきたカルチャーの歴史を、タイクーングラフィックスによる大胆なグラフィックと、黒田潔によるイラストレーションで表現し、工事内容の情報開示とギャラリー機能とを融合させている。(図1)

 また、日本橋三越前の地下工事のためにデザインした、鉄板製の仮設歩道では、従来のカラーコーンやフェンスが歩行者に与える抑圧的な印象や錯綜した動線の問題を解消するため、雨降り時の波紋模様をあしらうことで、安全かつ美麗な覆工板を実現。車道との境界線も明確に、歩行者の注意を惹きつつ楽しい印象を与えることに成功し、2005年度のグッドデザイン賞を受賞している。(図3)

 さらに、韓亜由美の企画・監修により、1/25?2/20の間、「工事中景展」と題し、同様の視点から工事現場に対するデザインの試みを集めた展覧会が開催される。
 表参道ヒルズの工事中仮囲いに本物の植物を用いて話題となったクラインダイサム・アーキテクツ(図2、図4)や、六本木ヒルズ建設時の仮囲いデザインが記憶に新しいブルース・マウ、佐藤可士和、矢萩喜従郎らが参加。
 同時に、これらのプロジェクトをまとめた書籍『工事中景 ケンセツゲンバノデザイン』(鹿島出版会)も刊行するなど、これまでは間に合わせのボロ布、ヨイトマケ感漂う残酷博、ルックス的にも回避すべき危険部位だった、”工事中景”の価値転換を図る、意欲的な企画となっている。


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 (図4:ピカピカプレッツェル/1999
  クラインダイサム・アーキテクツ photo:Katsuhisa Kida)

 ……時代が変われば向かうべき未来も変わり、”工事”の意味もまた変わる。
 資本主義下においては、空気以外のほぼすべてのものは”広告スペース”になり得るわけだが(広大な土地を用いた「宇宙から見える広告」すらあり得る話だろう)、工事現場もまた、無粋な広告に食い荒らされる5秒前。
 とすれば、ぜひその前に、”工事中景”に関するデザイン視点、審美眼をしっかりと根付かせておきたいものだ。
 いうなればこの地球自体が、いまや”工事中”なのだから。

【展覧会概要】
第622回 デザインギャラリー 1953企画展 都市の素シリーズ(1)
『工事中景展』
日時:2006年1月25日?2月20日
会場:松屋銀座 7階・デザインギャラリー

【関連URL】
Studio Han Design
  http://www.studio-han-design.com/

新宿サザンビート・プロジェクト(新宿駅南口基盤整備事業)
  http://www.ktr.mlit.go.jp/toukoku/ssb/ssb_top_j.htm

Written by 深沢慶太

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