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遠藤諭の電脳流 vol.03

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「スチームパンクと国産コンピュータ50周年」 遠藤諭

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ここのところコンピュータの歴史本を、たて続けに2冊ほどやっていた。
1冊は、国産コンピュータを作った人たちへのインタビュー集の増補改訂の『新装版 計算機屋かく戦えり』、もう1冊は、写真を中心にした国産コンピュータの歴史本『コンピュータが計算機と呼ばれた時代』である。
 来年は、国産初のコンピュータである「FUJIC」が誕生して50周年というわけで、こんな本を作っていたわけだ。

 古いコンピュータといえば、10月7日のこのコラム( vol.1「じゃがいも、洗濯、メッサーシュミット」)で、ドイツ技術博物館にある「Z1」復刻版について触れた。そして、それが金属板式論理素子によるコンピュータであると書いた。そしたら、あるコンピュータ業界の人から「その金属板式論理素子ってどんなものなんですか?」と聞かれた。
 Z1というのは、ツーゼという人が、1936?1939年の間に、ベルリンの自宅の居間でほとんど1人で作ってしまったコンピュータである。金属板式論理素子というのは、Z1が、いまのコンピュータの電子回路でやっていることを、そのままやってしまっている純機械的なパーツである。
 こう書くと、コンピュータ専門の人ほど「それって本当ですか?」と“ちょっぴり疑いの目”で見るか、「何かのパロディですよね」と“笑ってしまう”のどちらかなのかもしれない。まるでタイムトラベルして、いまのコンピュータの教科書を読んだけど、まだ電子回路が使えないから機械で置き換えたというようなシロモノなのである。

 スチームパンクが、蒸気機関をエネルギーとして、古典的メカトロニクスのままハイテク化する世界だとすると、Z1も、電動モーター式ながら純然たるメカトロニクスの産物である。
 メカトロニクスといっても、コンピュータの内部は歯車式とかではなく、ブール代数による論理機構からなっている。わずか64ワード(22ビット×64=176バイト相当)ではあるが記憶装置があり、中古の写真のフィルムを使ったパンチテープを使ってプログラムが動作する。これで、二進法浮動小数点演算をこなしてしまうのである。
 こうなると、いままで伝えられてきたコンピュータの歴史というものが、いくつかブッ飛んでしまいそうである。本物のZ1は、きわめて不安定かつ不完全な機械だったらしいが、米国では、ほとんどコンピュータ開発が始まっていない時代である。というよりも、米国は、ツーゼのマシンが空襲で瓦礫の下に埋もれてしまったのもあって、ほとんど認めて来なかったのだ。

で、その“金属式論理素子”とはどんなものかというと、何枚かの“L”字形や“I”字形の穴の開いた“金属板”と金属製の“ピン”からなっている。

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 写真は、その金属板をレゴで真似て作ってみたものだが、上から青(スイッチ)、グレー(入力)、黒(出力)、黄色(本体に固定)と重ねて、穴にピンを通す。“オン”の状態で赤いマークのところにピンがくる。これで、スイッチが“オン”側に来ているときにはグレー(入力)の動きが黒(出力)に伝わり、“オフ”側のときにはグレー(入力)の動きは黒(出力)には伝わらない。ピンは、いつも浮いた状態で、ちょうど遊星歯車のように働くところは、思わず「まいった!」と言いたくなる(遊星歯車って知らない人もいると思うけど、自動車がスムーズにカーブを曲がれるのもこれのおかげなのだ)。
 はたして、私のレゴ模型でツーゼの金属式論理素子をご理解いただけるかどうか? 私は、ドイツ技術博物館にある巨大プラスチック模型で、地元高校生と一緒に係の人に教えてもらったのだが。


【関連URL】
『計算機屋かく戦えり』  http://www.ascii.co.jp/books/detail/4-7561/4-7561-4678-3.html
『コンピュータが計算機と呼ばれた時代』  http://www.cbook24.com/bm_detail.asp?sku=4756146775

Written by 遠藤諭

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