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宇宙旅行と宇宙酔い

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Hirofumi Aoki
Image credit: Hiro Aoki

榎本大輔(Dice-K)氏の宇宙への挑戦や、アンサリXプライズにおけるスケールド・コンポジッツ社の民間宇宙飛行の成功により、一般の人にとっても、宇宙旅行の夢がぐっと現実に近づいてきました。

高度400kmの軌道を周回する国際宇宙ステーション(ISS)に約1週間滞在する宇宙旅行は約24億円($20,000,000)なので、これまで飛行した富豪たちのように、会社や株などで大儲けをしない限り、一般の人にはまだまだ手の届かない存在です。

一方、「宇宙」の定義である高度100kmまで到達し、5分程度の無重力体験をする弾道飛行は1200万円程度から募集が始まっており、豪華客船による世界一周と同程度の価格で宇宙飛行士になれそうです($102,000(スペース・アドベンチャーズ社)、$200,000(ヴァージン・ギャラクティック社))。

もう少し気軽に宇宙旅行の気分が体験できるものとして、飛行機の弾道飛行による無重力体験があります。アメリカのゼロ・グラビティ社は、ボーイング727-200を使って、1回30秒弱の無重力を15回ほど連続して体験できるツアーを約45万円($3,750)で提供しており、これまで多くの人が無重力体験をしています。有名人では、スケールド・コンポジッツ社の社長であり航空機デザイナーであるバート・ルータン氏や、ライフスタイルを提案する実業家のマーサ・スチュワートさんなども無重力体験をしています。

長期間の宇宙飛行による無重力体験では、骨や筋肉の減少、心臓循環器系の衰退、放射線などの生理的な影響の心配がありますが、宇宙船や航空機の弾道飛行による短時間の無重力体験で最も考慮しなければならないのは「宇宙酔い」でしょう。

宇宙酔いは、宇宙の無重力環境に行って早い人で数分から数時間以内に起こる吐き気や嘔吐などの症状を指し、スペースシャトルで初飛行の宇宙飛行士の3人に2人がかかります。宇宙酔いは時間と共に和らぎ、2、3日も経てばほとんど表れません。宇宙酔いの原因はまだはっきりと分かっていませんが、これまで地上の重力環境下で培われてきた平衡感覚や視覚、身体感覚など緒感覚のバランスが、宇宙に行き重力が無くなる事で崩れるために起こるという説が有力です。宇宙酔いを考慮し、宇宙に行ってはじめの3日間は船外活動(宇宙遊泳)を行うことはありません。もし船外活動中に宇宙酔いになり、吐いた汚物が宇宙服の中を漂い、喉や空気の循環装置に詰まったら大変です!

宇宙酔いのかかりやすさは、地上での乗り物酔いなどのかかりやすさとは関係なく、いまのところ事前に判定することはできません。飛行機の職業パイロットは、宇宙酔いにかかりにくい傾向にあるようです。唯一の確かな指標は宇宙飛行歴で、2回目以降の宇宙飛行では宇宙酔いにかかりにくくなります。

宇宙酔いを防ぐため、NASAではバイオフィードバック(自己の生理状態を計測し知覚することで、それを意識的に制御する方法)や、PAT(Preflight Adaptation Training)(宇宙で体験するような、視覚と平衡感覚、身体感覚が異なる刺激を地上で与えて慣れさせようとする方法)などの研究が行われていますが、効果に個人差があったり、統計的に十分なデータが得られていなかったりと、酔い止めの薬物ほど確かな効き目は得られていません。PATで使用されている装置については、さらに広く宇宙飛行士の訓練へ応用することも検討されており、これについてはまた別の機会でお話しできればと思います。

Mae Carol Jemison
バイオフィードバックの実験(AFTE)を行うメイ・ジャミソン宇宙飛行士 (Image credit: NASA)

ちなみに、ゼロ・グラビティ社では、これまでのNASAのKC-135という飛行機による豊富な経験を元に、1)1回の飛行で弾道飛行は15回程度まで、2)無重力の前に火星(地球の1/3)や月(地球の1/6)の重力を体験する、3)当日の食事は軽めにする、4)酔い止め薬(スコポラミンを主成分に、抗ヒスタミン剤と、スコポラミンの副作用である眠気を抑えるためのカフェインを配合したもの)の服用を勧める、5)酔いの一因である“ニオイ”を極力抑える、などの対策をすることで、ほとんどの方が宇宙酔いになることはないようです。せっかく高いお金を出した無重力体験の感想が、「気持ち悪かった」では残念ですものね。

Written by 青木宏文

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