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宇宙とポップミュージックの年代記 vol03

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「宇宙に向かうディスコの魂」 速水健朗


1977年、宇宙をテーマにした2本の映画が作られている。1本は宇宙人とのコンタクトを描いたスティーブン・スピルバーグの『未知との遭遇』、そしてもう1本は遠い昔の宇宙戦争を描いた『スター・ウォーズ』。この2つの作品は世界的な大宇宙ブームへとつながっていく。

米ではこの1977年にスペースシャトルの試験飛行に成功。アポロ11号以来の宇宙開発への意欲が高まった。日本では同じ年に『宇宙戦艦ヤマト』の劇場版が公開、そして『スターウォーズ』の日本版ともいえる『宇宙へのメッセージ』(深作欣二監督)も公開され、マンガでは竹宮恵子の『地球へ…』が連載開始。翌1978年にもブームは続き、あのインベーダーゲームがブームになり、ピンクレディの『UFO』も大ヒットしている。

1977年を代表するもう一本の映画『サタデー・ナイト・フィーバー』は、イタリア系移民の労働者青年がディスコで踊ることを通し自分を再発見する青春映画。これも世界的にヒットし、若者の生活を変えるほどの大ディスコブームへと発展した。そして、この映画もまた宇宙とは無関係ではなかった。

有名なトラボルタがミラーボールの下で踊っている『サタデー・ナイト・フィーバー』のポスターに使われた写真をよく見て欲しい。暗い照明、天井からぶら下がるミラーボール、ちりばめられた星のように輝くライト。ここからわかるようにディスコのフロアは宇宙を模して作られている。この映画のロケに使われたディスコの名前は『2001オデッセイ』といい、映画『2001年宇宙の旅』から取られている。そしてもうひとつ注目して欲しいのがトラボルタの衣装。宇宙服が白いのは船外活動時に背景からくっきり浮き出させるため。トラボルタが白いスーツを着ている理由も同じ、暗いフロアで映えるからだ。

ディスコの発祥は1970年のニューヨーク。黒人でゲイという二重にマイノリティが集まっていたクリストファーストリートのゲイバーでは毎夜DJが音楽をかけ、ゲイの黒人たちが踊るパーティを繰り広げていた。そしてジュディ・ガーランドの死に端を発した"ストーンウォールの暴動"が起こり、そこからゲイの公民権運動が始まった。ジェームス・ブラウンらが始めたR&Bが黒人の公民権運動抜きに語れないのと同様に、ディスコもゲイの公民権運動抜きには語れない。

ディスコが宇宙風の内装で飾られているのは、気まぐれや思い付きからきているわけではない。日本ではディスコバンドとしておなじみのアース・ウィンド・アンド・ファイアーは『太陽神』、『宇宙のファンタジー』、『シャイニング・スター』など宇宙をモチーフにした曲が多く、何より彼らのステージ衣装は宇宙服だった。

そもそもサン・ラーやマイルス・デイビス、P-FUNK(特にパーラメント)と多くの黒人ミュージシャンがさまざまな形で宇宙を取り上げている。『ブラック・マシン・ミュージック』の著者である野田努は"故郷(アフリカ)を奪われ、帰るところのない黒人の魂は宇宙へ向かう他なかった"と記している。太陽神を信仰した古代エジプト文明への回帰だったり、過度な精神世界への傾倒は宇宙に結び付き易かったり理由はさまざま。

黒人でゲイという二重に虐げられた人たちが生みだしたディスコは彼らの思想ともいえる快楽主義、刹那主義の最終到達点であった。その到達点である"ディスコ=宇宙"という仮説ならもう少しわかりやすいだろうか。

Written by 速水健朗

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