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宇宙とポップミュージックの年代記

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vol.01ジョー・ミークと衛星中継の時代


■宇宙中継時代の始まり
1962年。英国の一枚のレコードがアメリカのチャートでナンバー1を獲得する。その曲の名は『テルスター』。同年、初の商業通信用人工衛星『テルスター1号』が打ち上げられることで、米英間のテレビの中継放送が可能になり「宇宙中継」の時代がはじまった。今でこそ衛星放送という言葉が定着しているが、当時は、「宇宙放送」などと呼ばれていた。1963年には日米をつなぐ初めての衛星中継が放送された。第一報はケネディ暗殺の報だった。

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 前述の『テルスター』というインストゥルメントのナンバーは、この人工衛星の名前から名付けられた。この曲を演奏したのはトーネードズというグループだが、実質的にはジョー・ミークというスタジオエンジニア上がりの音楽プロデューサーの作品という要素が強いといわれる。ジョー・ミークは音楽スタジオのエンジニアとしてキャリアをスタートさせているが、もともとは電機メーカーのエンジニア。その後は米軍でレーダー技師を務めた。

 このようなキャリアを持つジョー・ミークの音楽の作り方は非常にエンジニア的なものだった。曲のタイトルにするくらいに人工衛星の打ち上げに胸をときめかせたのも、理系特有の無邪気さによるものだ。特に、軍隊時代にレーダー技師を努めていたミークに与えられた仕事は、彼のライフワークへとつながっていく。

■電波大好き!
 ジョー・ミークは、楽譜が読めず、楽器にも疎く、なにより音痴だった。彼の残したアウトテイクにはそれを証明する鼻歌なども残されている。オーバーダビングなどのテープ編集技術を駆使してずたずたにし再構成する。それがミークの作曲の作法だった。ヒットした『テルスター』も少ない音階で書かれたポップソングだが、調性が薄く、明らかにどこかがおかしい。

 そして彼のライフワークは宇宙にしか存在しないだろう「未知の音」を作り出すことだった。軍に在籍していたときにレーダー技師としてあらゆる音に耳を傾けていたことが、このライフワークへとつながったのだろう。そのコンセプトのもと製作された『I hear a new world』は、なぜかEPに分断され、コレクターアイテムになった。この音源は90年代にCDとして初めてアルバムとしてまとめられた。ジャケットは印象的な紫色の宇宙。中に収められた音楽には『Orbit Around the Moon』、『Dribcots Space Boat』など、宇宙に絡んだタイトルが並ぶ。

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■ジョー・ミーク その死
 ジョー・ミークの活躍は1960年代前半をピークに衰えていった。なかでも、とある男性歌手のプロデュースを断ったことが痛かった。その歌手の名はトム・ジョーンズ。彼は他のプロデューサーの手にかかりデビューし、1960年代の英国を代表する男性歌手になった。

 ミークを巡る最も奇妙なエピソードはその死だ。1967年、彼は自分の住むアパートの管理人の女性を銃で射殺し、その後自殺を遂げた。ミークが死を選んだ2月9日は、彼が心酔していたバディ・ホリーの命日だった。

 最期に「宇宙とポップミュージックの年代記」というテーマに戻すため、ジョー・ミークに見捨てられたトム・ジョーンズのその後の話をする。彼はビートルズに並ぶ人気を博す歌手となったが、70年代以降はパッとしなかった。そして次第に稼ぎの場をラスベガスのホテルのショーへと移すことになる。しかしその彼も90年代に再び名声を取り戻す。火星人の襲撃から地球を救ったのだ。ティム・バートン監督の『マーズ・アタック』の中での話だ。『マーズ・アタック』は地球が火星人の侵略を受ける内容のコメディ映画。森の動物たちにトム・ジョーンズのヒット曲である『よくあることさ』を唄って聞かせるこの映画のラストシーンは素晴らしかった。

ジョー・ミークはテルスターをタイトルにした曲を作ったが、彼に続いてアメリカのチャートを制したビートルズは1967年に衛星経由で世界へ新曲を発表する。これはジョー・ミークが命を絶った半年後の話。また1973年にはエルビス・プレスリーのコンサートが衛生中継で15億人の元に届けられる。テルスターの打ち上げ以降、世界は大きく変わっていき、音楽の受容のされ方も大きく変わって行くことになる。


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■ジョー・ミーク未発表音源(鼻歌入り)
http://www.traksboys.com/blog/archives/2005/03/joe_meek.php

Written by 速水健朗

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