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宇宙とポップミュージックの年代記 vol.05

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「宇宙へいったビートルズ」 速水健朗


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■宇宙ステーションでのコンサート

国際宇宙ステーション(ISS)での宇宙飛行士による常時滞在が始まったのは2000年の10月。某アニメに倣いカウントするなら今年2006年は宇宙世紀007年ということになる。

去る2005年の11月13日。元ビートルズのポール・マッカートニーがISSに向けてライブ演奏を行なった。2005年の8月に宇宙船ディスカバリーの乗組員の目覚まし音楽としてビートルズナンバーの『Good Day Sunshine』が使われたことを知ったポールがNASAに持ちかけたところから生まれた企画だ。

ポール・マッカートニーは米カリフォルニア州アナハイムで開いたコンサートの一部を、NASAのテレビシステムを通じてISSに向けて生中継した。ポールはISSに滞在する2名の宇宙飛行士に向けて生演奏による「ウェイクアップコール」を送ったのだ。地球上の生演奏が宇宙に向けて送られるのはこれが初めてのことだという。いや、正確にはそうではない。ポール・マッカートニーの生演奏はこれよりも30年も前に宇宙へ送られていた。


■全世界生中継番組

1962年7月10日、フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から世界最初の放送衛星テルスターが打ち上げられる。テレビの中継放送時代の始まり。ただし中継放送のことを当時はまだ宇宙放送などと呼んでいた。

その13週間後の1962年10月5日、海を渡った英国の地でのちに世界で最も有名になるロックバンドが「Love Me Do」というシングルレコードを発売しデビューを飾る。

そのビートルズが単なる英国のバンドから、世界的なアイドル的存在に変わったのは1964年のアメリカ上陸以降のことといわれる。ビートルズがアメリカでエド・サリバン・ショーに出演した回の視聴率は72パーセント。人数に直すと約7300万人だったといわれ、この間ニューヨークでは一件の少年犯罪も起こらなかったという。このアメリカ上陸同様、ビートルズにとって重要な出来事となったのが、1967年6月25日に史上初の全世界生中継が行なわれた『Our World』への出演だった。これは奇しくも同じ年に誕生した衛星放送とビートルズの接点でもある。

この『Our World』は前述のテルスターに代って創設された国際組織インテルサットの4つの人工衛星をつなぎ、世界5大陸の24カ国が参加するという趣旨の国際宇宙テレビ番組だ。ビートルズは英国代表という立場で参加し、当時まだ未発表の新曲『All You Need is Love(愛こそはすべて)』の録音の模様を披露した。これがビートルズの生演奏が宇宙へ送られた最初の瞬間だった。

『愛こそはすべて』は全世界に宛てたメッセージということが強く意識されて作られた曲だ。これ以降のジョン・レノンはメッセージ性を帯びた曲を書くようになっていく。そしてのちにエルビス・コステロが、やはり衛星による全世界中継が行なわれた『ライブエイド』(1985年)で『愛こそはすべて』を取り上げて唄っているが、もちろんこの『Our World』でのビートルズの演奏を踏まえての選曲だった。

■レコードも宇宙の果てに……

また、宇宙へ送られたのはビートルズの生演奏だけではない。彼らの演奏が吹き込まれたレコードも今ごろ太陽系の辺境を漂っている。

1977年8月20日に打ち上げられたボイジャー2号は、木星、土星、天王星、海王星と太陽系を巡航する惑星探査船。この探査船には宇宙研究で有名なカール・セーガン博士の一存により、金メッキされたレコードが載せられている。これは地球外の生命体に地球の存在を伝えるために地球上の代表的な音が採取され、記録されたものだ。ビートルズの楽曲も、55語の言語によるメッセージ、ザトウクジラの鳴き声、カラヤンの指揮によるベートーベンの運命らとともにこの金色のレコードに収録されている。

ボイジャー2号は惑星探査の仕事を終えると外宇宙へ向かうが、順調に飛びつづければ2030年頃には交信が途切れてしまう。その頃、ポール・マッカートニーは90歳手前。生きていれば地球外のファンに向けて生演奏をしているかもしれない。ちなみに今年の6月18日にポールはビートルズ時代に唄った『When I'm Sixty-Four』の64歳を迎える。

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Written by 速水健朗

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